僕のお気に入り ~ギター編~ (2)

副院長 岡本康久

 僕がギターを始めたのは2010年春、通勤途中に何気なく手にしたギター教室の勧誘ビラがきっかけでした。中学生の頃は当時流行ったフォークギターを親にねだったことがありましたが、狭いアパート住まいでは到底無理でいつの間にか忘れて過ごしてきました。20代後半から始めたゴルフには才能がないことを悟り、40代からのランニングはだんだんと記録が縮まらなくなり、歳を取っても続けられる新しい趣味をと考えていた時でした。恐る恐る駅前の古びたビルの3階にある教室の扉を開けると、哀愁をおびたギターの音色が流れてきました。自分と同世代の男性の演奏に聞き惚れ、彼の優しい物腰に誘われ、すぐに入会を申し込みましたが、彼(N先生)が僕のような初心者には勿体ない有名なギタリストだと知ったのは後になってからです。

 

 月3回のレッスンが始まると、53歳からの手習いは自己嫌悪と挫折の連続でした。中学の音楽の授業以来見る楽譜は全く理解できず、中年の節くれだった指は脳の指示通りには動いてくれません。生来の音感、リズム感の無さも痛感しました。ギター上達の一番の方法は緊張しながら人前で弾くことというN先生の考えで、発表会には半ば強制的に参加です。その日が近づくと眠りが浅くなり落ち着かない気分になります。舞台に立つと途中で頭が真っ白になり手が止まってしまったり、当日に病院からの呼び出しがあると天の助けとばかりにドタキャンしたこともあります。しかし発表会が終わった後の解放感は、出来の如何に関わらず快感でした。


…次回へ続く

2019年08月17日